最終エネルギー消費推移に見る日独の違い

 プーチンのウクライナ侵攻に対するドイツの苦悩についても、その大きな原因がよくわかる記事ですよ。
 日本における最終エネルギー消費の推移を見れば失われた30年を理解することが出来ることを論じました。バブル崩壊後、第三次産業のエネルギー消費が増加しました。これは不動産バブルで売買された土地に高層ビル建設が進んだためと理解できます。大都会(主として東京)にエネルギーと金とが集中し、一方で地方が疲弊しました。そしてそのように優遇された東京は、経済の牽引力にはならなかったと失われた30年は言っているのです。単に地域格差を拡大しただけのことです。このことはしっかりと認識される必要があるでしょう。これからの日本経済の再興の為には、全国の地域経済をしっかりと確保し、オール日本で行わなければならないでしょう。東京の皆さんも含めて、しっかりそれを認識して下さいね。
 ここではバブル崩壊と同じ頃東西ドイツを統一し、その後もEU経済の牽引車となってきたドイツのエネルギー消費推移と比較して考えて見ます。また現在進行中であるプーチンのウクライナ侵攻によるエネルギーへの影響について、日独間の違いを考える為にも、ここでのデータは役に立つと思います。

1973年~2020年まで通して日本の分野別最終エネルギー消費の推移を見る

上のグラフは、1973年~2020年までの、日本における最終エネルギー消費の分野別推移を示しています。その他にも大きなエネルギー消費の場所として道路上の消費(もちろん自動車による)がありますが、ここではそれを論じません。第一次産業、鉄路、空路、海路のエネルギー消費も、上記4分野に比べて遥かに小さいので、ここでは論じません。しかし上記3分野は、多くの人にとって、活動の場であり憩いの場です。つまり生活の場となります。
 1973年と言えばオイルショックの年です。これは第四次中東戦争が原因で引き起こされました。原油価格が高騰し、経済に大きな混乱を与えました。それを機に設立されたのがIEA(International Energy Agency)で、エネルギー安定供給の為のデータを集め、それを世界に知らしめることが、現在にいたるまでその任務です。したがってIEAは1973年以来、世界の一次エネルギー生産量、輸出入量、最終エネルギー消費量を把握し、それを公表しています。このブログで紹介するエネルギー消費に関するデータは、すべてIEAのHPによっています。
 改めて見て見れば、工場での消費を別として、日本のエネルギー消費推移は単純な構造をしています。20世紀にはエネルギー消費は、家庭であれ第三次産業であれ、緩急の多少の差はあるものの、増加の一路を辿っています。そして21世紀には家庭が先に、それに続いて第三次産業が安定(停滞?)の道を辿っています。2020年はコロナ禍の最初の年です。その影響は第三次産業にも工場でも見られ、明らかに経済が停滞しました。一方お家では家ごもりの結果、エネルギー消費が増加しました。このように明らかな影響は、2011年の福島原発事故にも見ることは出来ません。また21世紀に入って、すぐかけ声となったクールビズの影響も見ることは出来ません。そうしてみるとコロナ禍が如何に大きな出来事かとよくわかりますね。
 失われた30年の記事で指摘したのは次のようなことでした。失われた20年(あるいは30年)が始まったのはバブル崩壊後の1990年前後だった。しかしその後も第三次産業ではエネルギー消費は、むしろ増加を強める。これは高層ビル群が乱立し始めたからである。高層ビルは電気を爆食いするからだ。一方地方は疲弊して、経済の血液たるエネルギー消費が増えるはずもない。言い換えれば東京一極を加速させたことは逆に経済の停滞を招いただけのことだったという見方が出来ます。
 さて1990年頃ベルリンの壁が壊れ、東西ドイツを統一しながらも、EUの経済を牽引してきたドイツでの最終エネルギー消費の推移は、日本と比較してどう違うのでしょうか。それとも同じような経緯なのでしょうか。それを見て見ましょう。

同じ期間でドイツの最終エネルギー消費を比較する

 グラフを見ると、日独の差をいくつか見ることが出来ます。同じような傾向を示しているのは、工業(第二次産業)でのエネルギー消費の緩やかな減少だけだと言えるかも知れません。
 まず第三次産業と家庭での消費の大きさですが、日本ではほぼ同じ値をずっと示していることに対し、ドイツでは家庭のほうが、第三次産業よりもエネルギー消費が大きいですね。平均してほとんど倍ほどあるでしょうか。一般的に言って日本の失われた30年が異常で、そこでは第三次産業が家庭の消費より上回っていますが、ドイツに見るように他の国では、家庭のほうが第三次産業よりエネルギー消費は多いのです。
 日独でさらに決定的に異なるのは、ドイツのエネルギー消費は、家庭でも第三次産業でも、過去半世紀の間、基本的に増えも減りもしていないことです。長い上昇期の後、停滞期に入った日本とは大きな違いが見て取れます。これは何故か更なる分析が必要でしょうが、東西ドイツの合併など有ったにしても、ドイツでは大きな社会的変動はなかったことになるでしょう。人口の大幅移動などなく、中小規模の都市がそれぞれに経済圏を持っているドイツでは、オールドイツで国の経済を支える体制が常にあったと言えるでしょう。
 それにしてもドイツのエネルギー消費には、細かい変動が日本と比べるまでもなく、かなり多く見られることも皆さんお気づきでしょう。この原因を探ってみましょうか。それには電気と天然ガスの消費の推移を家庭部門、第三次産業部門で見るのが一番です。

ドイツにおける天然ガスと電気の家庭と第三次産業での消費の推移

 電気の比較的緩やかな推移に対して、天然ガスの大きな変動が印象的ですね。1983年まで家庭でも第三次産業でも、一切使われなかった天然ガスが(工業では一部使われていました)、急に1984年にはかなり大量に、その両方の部門で使われ始めました。特に家庭では電気と同程度使われ始めます。
 1984年ではまだ東西ドイツが分裂したままでした。これは旧ソ連が東ドイツにパイプラインで天然ガスを送り始めたのだと、すぐ想像できます。このころ私は西ドイツを研究で良く訪ね、ドイツ人の同僚から良く家にも呼ばれていたので思い出しますが、このころキッチンで当たり前に見られたのは、ガスコンロではなく電気コンロでした。ヨーロッパの大半は200Vの電圧で電気が来ていますから、電気コンロのパワーはかなり大きく、結構びっくりしたものでした。お風呂は普通の家庭にはなく、シャワーが通常ですが、シャワーのお湯はビル全体で供給されているのでしょう。シャワー口を開けばすぐお湯が出ていました。考えて見ると西ドイツの普通の家庭には、ガスは来ていなかったじゃないでしょうか?エアコンも通常の家庭では必要なく、夏は気温30℃を越えることは珍しく、冬は寒いが燃料を直接燃すストーブで暖をとるか、スチームで熱供給を受けて部屋を暖める方式だったと思います。
 急に天然ガスが供給されはじめ、それが次の年からも同様の値が続くというのは、如何にも独裁下の政治体制が造りだした現象だと思います。それがしばらく1990年まで続き、その後徐々に増えていく様子は、その考えを延長すれば納得がいきます。東西ドイツが合併され、旧西ドイツにも天然ガスが供給され始めたのですね。
 その結果家庭での天然ガス消費は、電気の消費を大きく上回り、電気の倍ほどのエネルギーが天然ガスから得られると言うパターンが定着し、現在に到ります。21世紀の初めには、第三次産業での消費が急に増加する現象が見られます。これはメルケルさんとプーチンが協力したパイプライン整備の結果でしょう。いずれにせよ我が国の電気とは違って、ドイツでは天然ガスがエネルギーの代名詞みたいな立場になっているわけです。今回のプーチンの仕業に、ウクライナに次いで腹を立てているのはドイツの人達かも知れません。しかしエネルギーを握られたらねぇと、ドイツの政治家達はどんな思いなのでしょうね。
 日本の政治家達は、相変わらずやってる感だけで、「今回の」エネルギー危機を乗り越えようとしているようです。でも日本のエネルギー自給率は、数字に表せないほど無に等しいのです。今回の危機は天然ガスのロシアからの輸入は天然ガス輸入全体の8%に過ぎないから、やってる感で誤魔化そうとしているだけです。日本国民の皆様、日本で本格的なエネルギー危機が来る前に東京一極集中から脱し、持続社会建設への道を歩み始めようではないですか。
 え、何故東京一極集中が悪いとなるんだって?このブログの他の記事で様々な面から指摘しています。例えば下記の記事をお読み下さい。
 なおここではドイツの消費の変動理由を考察するために、電気と天然ガスだけ見ましたが、さらに知って置いて欲しいのは、これもまた日本の異常さで、家庭も第三次産業もエネルギー消費の半分以上が電気で占められていることです。2019年時点の日本では、家庭部門での電気の消費量は、家庭での全エネルギー消費(ガス、石油など含む)の50%強であり、第三次産業では55%強ですが、ドイツでは電気は家庭部門の20%弱、第三次産業の40%強となっています。

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