エネルギーから見た失われた30年 II

 前の記事では、1973年に起きたオイルショック以降の日本におけるエネルギー消費の推移を見、明らかに過去20年ではエネルギー消費の大幅な増加もなく、かといって節電・省エネのかけ声も空しく、同じようなエネルギー消費が見られ、これは経済が停滞している明らかな兆候であるということを見ました。一方1973年から2000年までは、エネルギー消費は一方的に上がり続けています。特筆すべきは、失われた30年の最初の10年間で、第三次産業での電気エネルギー消費が、かつてないほど上昇し、家庭における消費以上の大きさまで増えたことです。工業立国だった日本が、東京を中心とする商業立国へと転身した明らかな兆候がそこに見えます。しかし皮肉なことに、その転換期に失われた30年が始まったのです。東京を中心とした商業立国は、日本の経済を牽引できないことの、明らかな証でしょう。今回はその結論を更に裏付けるエネルギー消費のデータを示そうと思います。
 前の記事では、エネルギーの代表格である電気を取り上げ、電気の大量消費場所である工場、第三次産業、それに家庭でのデータを見ました。これらはほとんどの人の仕事場であり、また生活の場であり、建物の中でのエネルギー消費です。一方このなかに収まりきれない大きなエネルギー消費場所があります。それは道路です。道路では大量の石油製品が消費されます。鉄道もあると考える人もあるでしょうが、鉄道のエネルギー消費は、道路上の消費に比べて無視できるほど小さいのです。

上のグラフは1973年~2000年の道路上でのエネルギー消費です。そしてほぼ100%が石油製品(ガソリン・軽油)に依るものです。あきらかな上昇が見られますが、失われた30年が始まってすぐに、停滞期に入っています。

 上のグラフが21世紀に入ってからのものです。前の記事で見た建物の中の電力消費とは違って、下降傾向が明らかに見て取れます。この結果は言うまでもなく地方衰退が原因でしょう。大都会とは違って地方では自動車無しの生活は考えられないのですから。その地方が衰退すれば、自動車の運行も減少するでしょう。そして過剰な自動車依存は、石油が何かの理由で高騰すれば、ひとたまりも無い悪影響を地方に及ぼします。
 東京が経済の牽引力になり得ず、地方は衰退のままだとすれば、日本の将来は見る影もなく暗いものと考えられます。
 進むべき方向は明らかでしょう。社会構造を変えず今のまま進めば、建物の中のエネルギー消費は変わらず続きます。建物には決まった量の空調、ほぼ決まった量の照明が必要だから当然でしょう。建物が集中し、また経済の牽引力も待たない東京から、地方へ分散させていくべきでしょう。地方は広い空間を持ち、再生可能エネルギー(自然エネルギー)も取得しやすいのです。
 一方で自動車の必要性を減じていくことが求められます。鉄道の上を走れば、運動に対する抵抗が減じるので、エネルギー消費が少なくて済みます。地方都市のLRT導入が必要なことは明白です。

次にエネルギー消費について、その推移を日独で比べて見ましょう。何か見えてくるかも知れません。