電車は何故エネルギー消費が少ないのか

エネルギー消費を比較する

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運輸部門での消費は家庭より多い

省エネが必要であること、誰も否定はしないでしょう。多くの人が家庭やオフィスでの省エネを考えますが、運輸部門での省エネを語る人はあまりいません。以下は、調べるとすぐわかる事実です。

  • 例えば日本では家庭でのエネルギー消費(約15%)よりは、運輸部門(約25%)が多い。
  • 家庭での省エネを工夫するなら、運輸での消費を気にしないのは何故?
  • 日本では第三次産業での消費は(約18%)、家庭の消費(約15%)を上回るが、約25%もある運輸部門での消費は、第三次産業よりも上回る

鉄道は運輸部門のわずか2%に過ぎない

以上はIEA(国際エネルギー機構)が毎年公表するデータで、誰でも確かめることが出来ます。運輸部門の消費とは人や物の移動のための消費となりますが、運輸の手段は様々であるため、どの手段での消費が大きいかもIEAのデータでわかります。IEAの分類の一つに、道路・鉄路・空路・海路の区別があります。そのパーセンテージを見てみましょう

  • 道路   約90%
  • 鉄路   約2%
  • 空路   約3%   (国内線のみ)
  • 海路   約3%    (同上)

圧倒的に道路上での消費が多いことが解ります。皆さんが町中で見る乗用車・トラック・バスなどでほとんどが消費されているのです。
一方鉄路の少なさを見てください。鉄路すなわち鉄道でのエネルギー消費です。運輸部門の消費のうちわずか2%にしかすぎません。日本の鉄道は発達していて、JRの新幹線・在来線を初め、大都市では通勤用の電車が発達しているところも多くあります。電気自動車がしきりと宣伝されますが、運輸部門のエネルギー消費を劇的に変えるには、鉄道を見直す必要がありそうです。

二種類の馬車

では何故鉄道ではこのように消費エネルギーが少なくてすむのでしょうか?それを知るため、一つ動画を見てください。Youtubeにアップしている動画です。

札幌で撮影した二台の馬車 (youtube.com)

動画に最初に出てくるのは、札幌郊外にある明治開拓村です。そこに馬車鉄道が今も走っています(と思います)。明治時代、日本のあちこちでも見られた鉄道馬車で、確か銀座でも走っていたと言われています。時代の流れで過去の物になっていますが、今は時代の大きな転換期、古い物を見直して、何故それが過去の物になったのか、考え直す必要があります。もしかしたら、過去の物のほうが、正しい選択だったと言うこともあり得ますからね。

ブレーキと走り出しに注目

動画の最初の部分ではブレーキがしきりに気になっています。ブレーキだから触らないでくださいとか、いたずらが好きな中学生?が、無視して触ったりしているのをおじさんが怒ったりとか、馬車が走り出す前におじさんが子供たちを御者台から下がらせ、ブレーキを丁寧に直すとか。
いざ馬が力を込めて走り出す様子を見てください。走り出すときのいかにも重そうな様子、一方走り出した後は、馬はいかにも軽快な足取りに変わります。
その後動画は札幌中心の広場にある、もう一つの馬車に移ります。鉄道と違って通常の道路の上を走りますから、鉄車輪は使えず、自動車と同じタイヤが四輪ついています。
御者台を見てください。鉄道馬車では客が御者台に上るのは禁じられていました。それに対し、ここでの御者は家族連れを、それも赤ちゃんまで乗せています。なんて優しい?? でもそれには理由があるのです。またよく見てください。御者台にブレーキがあるようには見えません。
走り出しをよく見てみましょう。走り出しにはやはり馬は力を込めています。しかし最初の力の入れ方は、鉄道馬車と比較しても長く続くようであり、そして同じ速さでの動きに移っても、馬の足が軽快であるようには見えず、絶えず力が入っているように見えます。
何故力を絶えず入れ続けなければならないのでしょう。それは交差点を曲がりきって横断歩道の前に来たとき解ります。馬はゆっくりと止まりますが、それと同じようにゆっくり、馬車自身も止まって行くようです。つまりこの速度では、タイヤの馬車は馬が引かなくなると、すぐに止まってしまうのです。歩くと同じような速さでは、タイヤの馬車はブレーキをかける必要なく、馬が引かなくなると止まってしまうのです。

鉄道は何故エネルギー消費が少ないのか

鉄道は、何故エネルギー消費が少ないのか。理由は簡単です。鉄道は運動に対する抵抗(摩擦抵抗)がタイヤに比べて格段に少ないのです。したがって走っている鉄道車両は、慣性の法則に従って、そなまま走り続けようとする、定速走行に入ったら、エネルギーの供給はごくわずかでもすむのです。したがって、低速度で走っていても、止まるまで進む距離が長く、ブレーキがきっちり働かないと、そのまま走り続けようとし。危険が非常に大きくなります。

一方タイヤで走行する車両は、運動に対する摩擦抵抗が大きく。常にエネルギーを与え続けなければ、どんどん速さを失っていきます。このためタイヤによる車両は、エネルギー消費が大きくなります。これが道路上でのエネルギー消費が大きくなる理由で、EV(電気自動車)に変えても、この事情は変わらず、本気で持続社会を目指すのなら、主要なる運輸手段を鉄道に切り替える工夫が必要となります。

脱炭素はビジネスチャンスだ、と得意げに宣伝をする人は多いのですが、残念ながらそのような人に限って、EVで良いだろうと深く考えもせず発言する傾向が強く見られます。脱炭素を真にビジネスチャンスとしようとするならば、エネルギー消費についての理解をきちんとしてから、行ってほしいものですね。

えねるぎぃ亭南駄老でした。