各国のLRTを紹介します

昨年夏、宇都宮に新しくLRTが開通しました。うれしいことに、利用客は順調だと言うことです。これを機会に日本各地でLRTが開通すれば良いのですが。何故ならLRTは地方都市を活性化させ、またその地を持続可能の地とするための、大きな力となるからです。ここではヨーロッパ各地のLRTを紹介していきたいと思います。また動画をYoTubeにあげて、それにリンクするようこのページを作成しますので、是非ご自分の目で見て、その便利さを知って頂きたいと思います。

カールスルーエのカイザー通り

ドイツのカールスルーエは人口約30万人の、ドイツの都市です。この町で一番の賑わいを見せる通りはカイザー通りと呼ばれ、トランジットモールとなっています。
トランジットモールとは聞き慣れない言葉ですが、簡単に言えば歩行者天国で、その道を通行する乗り物はLRTだけであるというのが特徴です。LRTはゆっくりと走り、人は電車をよけながら、自由に道を行き来します。信号すらありません。何より実際に見てもらいましょう。
カールスルーエのLRTとカイザー通りのトランジットモール-I (youtube.com)
ごらんのように道の両側は商店街となっており、夏にはオープンカフェも出そろいます。電車はゆっくりと走るので、電車道と歩道が隔離されることはなく、人は電車が来ないことを確かめ自由に道を横断します。
日本でも路面電車は走っていますが、自動車の邪魔者だと考える人も多く、20世紀後半に多くの都市で撤去されました。今でこそ地方都市に路面電車があるのは良いなと思う人もありますが、まだ自動車の邪魔になっていると考える人も多いようです。でもカイザー通りの様子を見ると、自動車の方が邪魔だったのだと、気がつく人もおおいのではないでしょうか。

電停はどうなっているの

日本では電停は車道の中にあり、歩道から電停に行くのも、ちょっと一苦労します。また電車に乗るとき、電停から一段か二段ほど上って電車に乗るのが当然とされています。
LRTの床は電停の床の高さときっちり同じ高さに作られており、乗車、下車に段差は全くありません。そこで車椅子の人も自力で電車の乗り降りが出来るのです。
また電停から離れるに従って、歩道の高さが緩やかに変化しており、電停を離れると、歩道と電車軌道との段差は完全になくなり、人は通りを渡るのに何の苦労も無い状態になります。日本ではこのような光景は見られないでしょう。段差に気をつけて次の映像を見てください。
カールスルーエのLRTとカイザー通りのトランジットモール-II (youtube.com)

自動車の交通整理をするLRT

20世紀終盤多くの都市で路面電車が穴居された大きな理由が、路面電車は自動車の邪魔になる、ということでした。
LRTはトランジットモールだけではなく、多くの道路で走ります。カールスルーエでも路線が発達していて、自動車と一緒に走る道路もたくさんあります。でも不思議なことにヨーロッパの多くの町でLRTに乗りましたが、LRTが信号で止まったという記憶が無いのですね。あるときそれに気づいて何故だろうと考えました。そして答えはすぐわかりました。なんとLRTが近づくと信号が青に変わり、待っていた自動車もLRTと並行して走りだすのです。
これも動画を見てください。カイザー通りに向かうLRTの車両の仲から前方を撮影しています。
ドイツでは車両も自動車も右側通行です。走るLRTの右側には、自動車が並んで待っています。前方を横切る自動車なども遠くに見えます。当然右にいる自動車は、信号が赤で止まっています。
LRTの前の信号も赤ですが、LRTが近づくにつれて赤から黄へ、そして青に変わります。横に止まっていた自動車が走り始めます。ですが車線を変えて、LRTの前に出る自動車はありません。それは悪質な交通違反になります。
しかしLRTの後ろでは電車の線路上を走ることが許されています。そうすることによって、逆に渋滞を避けることが出来るようなシステムになっているのですね。
LRTが近づけば青信号!! (youtube.com)

カイザー通りは河原町通りより賑わっている?

繰り返しますが、カイザー通りがあるカールスルーエは人口30万人の都市。それに対して京都は人口が140万人。都市の大きさは比較になりません。ところが私が撮った映像ではひょっとしてカイザー通りのほうが賑わっているのじゃ無いかと思えるのですね。実際映像を見てください。
カールスルーエのLRTとカイザー通りのトランジットモールIII (youtube.com)
映像はカイザー通りを、ヨーロッパ広場から紳士通り、さらにマーケット広場へ向かうLRTの車窓から、撮影したものです。これらの駅間隔は、ちょうど河原町通りを、市役所前、河原町三条、四条河原町との駅間隔とほぼ同じです。河原町通りを通るバスの車窓からの景色と、カイザー通りのLRTの車窓からの映像を比較してみましょう。
京都の交通問題-II(日独都市中心街の交通事情) (youtube.com)
ほぼ同じ距離を走るための所用時間が、まるで違っていることに気づくでしょう。またカイザー通りの方が道が広いと考える人もおられるかもしれません。しかし道の広さも調べてみると、実際はほぼ同じなのですね。カイザー通りは道中央二車線を鉄道に当て、河原町通りでの外側一車線と歩道の幅が、合わせて歩道になっていると考えると、道幅はトータルでほぼ同じだと解るでしょう。

もう一つのカールスルーエLRTの成功の鍵

カールスルーエのトランジ、ットモールが、何故これだけ賑わっているのでしょうか? それには訳があります。カールスルーエのLRTは、広い面積に渡ってその鉄道網が敷かれているのです。でもそれを見る前に、ドイツと日本の決定的な違いを見てみましょう。よくドイツは環境先進国であり、ドイツで出来て何故日本で出来ないのか、東京で公演などを行ったとき、しばしば聞かれたものでした。単純にアメリカをまねるという間違いを日本では戦後ずっと行ってきたし、同じようにドイツをまねるという発想は安易でしょうが、無意味な物が多いのです。日本とドイツの決定的な違い、それは東京一極集中の日本に対して、ドイツは地方分散型の国なのです。それをまず見てみましょう。

ドイツは地方分散型社会である

 ドイツは日本と違って地域分散型社会です。例えば首都を比べてみましょう。日本の首都東京は、東京都の人口が1410万人。そのまわりも首都圏として千葉、埼玉、神奈川の各県が東京に追従しています。
ドイツの首都はベルリンですが、「ベルリン・ブランデンブルグ都市圏」の人口は東京都の半分に満たない620万人です(英語版Wikipediaによる)。そしてその「都市圏」の面積は370370平方キロとあります。さらにみると「都市圏」中心部の人口は446万人、つまり74%の人が(ママ)都市圏の中心部12%を占める3,743平方キロメートルに住むとあります。
 この数字ピンとこないかもしれませんが、これを首都圏の面積及び人口と比較してみましょう。まず東京都の面積及び人口と比べてみましょう。ベルリンの中心部とされている、つまり446万人が住んでいる土地の面積は3,743平方キロは、東京都の面積2,194平方キロメートルの倍近くになります。つまり日本の「首都圏中央部ー東京」では、ベルリン中央部の半分ほどの面積に、三倍強の人が住んでいるのです。
 中心部の外部は更に印象的です。ベルリンでは広大な周辺部(26,627平方キロ)に人口はわずか174万人、一都三県の三県(千葉、埼玉、神奈川)を首都圏の周辺部と考えると、面積11,371平方キロに人口2,282万人と、首都圏の人口集中が異常なものに見えてきます。下に表としてまとめておきます。

日本(東京)ドイツ(ベルリン)
中心部面積 2,194平方キロ 3,743平方キロ
中心部人口 1,410万人 446万人
周辺部面積11,371平方キロ26,627平方キロ
周辺部人口 2,282万人 174万人
東京とベルリンでの中心部と周辺部の面積と人口の比較。ドイツのデータは英語版Wikipediaによる。Berlin/Brandenburg Metropolitan Region – Wikipedia
ベルリンの周辺部は同Wikipediaのメトロポリタンリージョンから中心部の値を引いたものであり、日本では中心部は東京都、周辺部は千葉、埼玉、神奈川の3県とした。