オモロー-電気運搬船だって

面白く考えさせられるニュースを紹介していきたいと思います。今回は次のニュースです。共同通信からネットで配信されたニュースとして見つけました。

世界初の「電気運搬船」開発 地方で余る再生可能エネ、都会へ

 東京都の新興企業「パワーエックス」が、完成すれば世界初となる「電気運搬船」の開発に取り組んでいる。地方では太陽光や風力など再生可能エネルギー由来の電気が余ることが多く、船に搭載する蓄電池にためて、都会向けに輸送する計画だ。政府は4月に閣議決定した海洋基本計画で支援を検討すると明記し、大手商社や電力会社も出資などを通して後押ししている。

 再エネの拡大が進む北海道や東北、九州などを中心に、電力会社が電気の過剰供給を避けるため事業者に一時的な発電停止を指示する「出力制御」が急増している。電気運搬船が実用化できれば、再エネの有効活用につながると期待される。

 出資する今治造船(愛媛県今治市)が設計し、2025年の完成を目指す。一度に運べる電気は約24万キロワット時で、2万4千世帯の1日分の使用量に相当する。26年から実証実験を予定しており、九州電力や横浜市港湾局が参加して電気の出荷や受け入れを検証する。
 パワーエックスは岡山県玉野市に工場を建設中で、運搬船に搭載する蓄電池を製造する計画だ。

共同通信ネット記事

何故自動車を使わないのか?

上記の記事で喜んでいるあなた、ちょっと考えてください。何故運搬船なんでしょう。これまで物の輸送では、トラックが使われていました。え、トラックの運転手の確保が難しいからって? トラックはこんな大量の電気を運べないからって?いい線ですね。そのとおりトラックは人手も必要だし、大量の物資は運べないし、いわゆる効率が悪いのです。
 さらに重要なことがあります。この運搬船は電気すなわちエネルギーを運びます。その運び手がエネルギーを爆食いする乗り物だったらどうなります。なんてアホなことやってるんや、いうことになりますね。トラックーすなわち自動車は、エネルギーを爆食いします。時代遅れなのですよ。
 現代日本は時代遅れな情報でいっぱい。大手自動車会社が、未来の自動車の夢を大枚をはたいてばらまいているのはその一つの例です。なんとアホなです。なんとかたいむすにだまされず、しっかり未来を考えましょう。そうです。自動車社会脱却を考える習慣をつけましょう。

何故東京の会社が始めたのか?

現在日本のエネルギー自給率は恐ろしく低いので、化石エネルギー(石炭、石油、天然ガス)はすべて船で運び込まれています。
 そうか、未来には電気輸送船が運ぶエネルギーを使うようになるのか。そう思ったそこのあなた。よく考えてくださいね。まず同じ船で運べる石油が持つエネルギーと、電気が持つエネルギーは、どちらが大きいのか?
 わからないって?簡単にわかります。自動車で考えてください。時代遅れの自動車も、エネルギーを正しく考える材料を提供して、わかりやすく教えてくれます。
 何故ガソリン車は普及したか、またEVは普及しないのか。それを考えてください。
 燃費10kmの自動車が、10リットルタンクにガソリンを積めば、100km走れます。10リットルの石油など軽い軽いです。一方EVが100km走るための電気を蓄える蓄電池は恐ろしく重い。そのため一回充電時の走行距離が少ないのがEVが普及しない理由です。これを知っているから、あの自動車会社はEVではなく、水素にこだわりました。でも水素もあの会社の力によっても普及しなかったことを思えば、問題があるのだろうと考えなければ。そしてその理由を考えなければ。
 話を戻すと同じエネルギー量を持つ石油と蓄電池の重さを比べると、蓄電池は桁違いに重い。したがって先の問題の答えは簡単です。タンカーが運ぶ石油のエネルギー量は、同じ規模の船が運ぶ、電気のエネルギーに比べて、桁違いに大きい。逆に電気運搬船が運ぶエネルギー量は、タンカーが運ぶ石油のエネルギーと比べると、桁違いに小さいことを頭に入れて置きましょうね。それはEVがなかなか普及しないことを理解すれば、当然わかることですね。
 そこで次の疑問を考えてみましょう。何故電気運搬船を東京の新興企業が取り組むのか? この答えは簡単ですね。東京が電気を必要としているから。そして何故電気を売る側の地方が始めなかったのか? この答えも簡単です。地方に財力がないからです。長年東京に富を吸い上げられて。
 売り手が複数いて、買い手がそれを選ぶことが現代経済の常識です。上記記事が示すように、売り手は北海道、九州、東北などいくつもあります。
 売り手がいくつもある場合、売り手は売るための努力をします。したがって電力の売り手である地方が、本来なら地元資本で電気運搬船を建造し、そして地元に利益を還元するのが当然でしょう。一方の東京では、エネルギーは買うのが当たり前と、地方で余る電気を安値で買うことを考えるでしょうが、この構造は健康な社会構造とは思えません。
 フェア・トレード。二十年も前に、東京人が好きな欧米ではやった考えです。当然SDG’sには取り入れられていることがSDG’sを読んで、その意味を考えれば得わかります。でも先進的な町であるはずの東京マスメディアは、その言葉を大きく取り上げなかった。東京が買い手で、産地の生産物を安く手に入れようとすれば、疲弊した日本の地方相手にフェア・トレードでない商売をすることにつながります。現に再生可能エネルギーは、環境破壊であると、日本各地でフィールドワークを進める生物学者から聞いた話です。再生可能エネルギーで東京を延命させようという考えは、日本の地域の環境破壊を生んでいることを、東京の人は理解しなくてはいけません。

電気運搬船の試みは成功するのか?

電気運搬船という試みは成功するのか? と考えてみましょう。
 もし「成功」を東京に現在の規模で電気を送るのだというなら、決して成功するとは思えません。24万キロワット時すなわち2万4千世帯の1日分の電力量というのは、いかにも大きなものに見えるでしょう。一世帯三人として計算しても七万二千人ぶん、ちょっとした地方都市の人口に相当します。しかしちょっとした高層ビルなら、一日十万キロワット時くらい平気で消費します。先に見たように電気輸送船が運べる電気エネルギーは、タンカーに比べて微々たるものです。林立する高層ビルを抱える東京の電力を支えるには、東京湾をひっきりなしに行き来する電気輸送船で埋め尽くさなければならないでしょう。東京湾が死にます。江戸前(本来の意味は東京湾でとれるという意味です、念のため)の寿司なんて、遠い過去の神話になってしまいます。
 バブル後、東京の消費電力量は、急激に増加しました。しかし東京に電力を大量に送り込んだとき、日本の失われた30年が始まりました。東京に電気を送り込んでも、日本経済はもはや成長しないのです。すべての地方が力をつけなければ。そして東京は地方から富を収奪することをできるだけ速やかに止めなければ。
  失われた30年とパラダイムシフトを読む。
 でも東京に電気を送るという元々の考えを捨てて、電気運搬船を考えてみましょう。そうすれば、この電気運搬船は、未来に向けて大きな役割を持つことが見えてきます。
 北海道や東北、九州などは、電気を貯めて売るだけの再エネ発電量を持っているのです。そして十万人弱の町の家庭の一日の必要電気を蓄える電池を、電気運搬船が実証実験やってくれているのです。政府財界の肝いりで運搬船ができるでしょうし、様々な電池が実際に研究・量産化されている現代日本で、良い畜電池が搭載されるでしょう。それを地元に置くことを考えましょう。そうすれば、再エネを使って自前でエネルギーを作り蓄えるあなたの地方は、再エネ自家供給可能地という、限りない魅力を持った地域になります。あなたの町は本来千年規模の歴史を持つでしょうが、未来千年規模の持続可能社会に栄える資本を手に入れるのことができるです。その資本を使って、地域の魅力を高め、新しい町を創生できます。
 電気運搬船は、十万人分の家庭の一日の電力量を、電池に蓄えることができることを教えてくれます。全国に散らばる人口十万人くらいの都市は、多くの建築物の屋上にソーラーパネルを取り付けるとか、風力発電をするとか、小水力発電機を数多く取り付けるとか、様々なことができます。そしてさらに蓄電池を取り付けると、再生可能エネルギーは安定性がないなど、古い考えに縛られる必要がないことを皆に知らせることができるのです。
 そのような地域の連合体として、日本を作り直すのです。時代遅れの東京一局中心を脱して。
 エネルギーをよそから持ってくると言う発想は、恐ろしく時代遅れで、そのような発想しかできない人は、持続社会に反対する頑迷な人としか、未来の人は見ないでしょう。ちょうど地球が動くなんて馬鹿なとガリレオやケプラーを笑った17世紀初頭の人々のように。東京中心説は地球中心説のように、恐ろしく時代遅れなのです。
 天動説から地動説へを読む。
 エネルギーを正しく考えれば、未来が見えてきます。